泉大津病院通信泉大津内科/あいの泉クリニック
インフルエンザ脳症って何??
冬になると流行するインフルエンザ。
年明けからあいの泉クリニックにもインフルエンザの患者様が多数来られています。
冬になると空気の乾燥と相まって感染力が強まり一気に流行します。
そのインフルエンザの合併症の中で「インフルエンザ脳症」というものがあり、命に危険が及んだり、後遺症が残ったりする恐れがあります。
今回はインフルエンザ脳症の症状、予防法、診断方法、治療法などをご紹介させていただきます。
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスに感染する事で起こる免疫異常により、脳の働きに異常がみられる状態の事です。
インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症の1つで、5歳以下の乳幼児がかかる事が多いものです。
インフルエンザ脳症が発症すると、後遺症が残ったり、場合によっては命に危険が及ぶことがあるので、インフルエンザが重症化してしまわないように予防接種を受けておくことが大切です。(予防接種は早いところでは10月の末頃から予防接種を受けることができます)
インフルエンザ脳症の症状には、高熱や咳、関節痛、倦怠感といったインフルエンザの症状以外にも、意識障害や5分以上続くけいれんなどがあります。
これらの神経症状は熱が出た後、数時間から一日の間に現れることがほとんどです。
インフルエンザにかかっている時に、うとうとして呼び掛けても返事や反応がないなどの意識障害の症状が見られたらインフルエンザ脳症が起こっている疑いがあるので、すぐに救急車を呼んでください。
けいれん
インフルエンザにかかってけいれんが起こった場合、高熱によるけいれん(熱性けいれん)が起こっている可能性も考えられます。熱性けいれんであれば、多くが5分以内に治まり、特別な治療は必要としませんが、15分以上けいれんが続いたり、何度も繰り返したり、左右非対称のけいれんが現れたりした場合もインフルエンザ脳症が原因の可能性があるのですぐに救急車を呼んでください。
異常行動
インフルエンザ脳症になると、幻覚を見る、意味が分からないことを言う、理由もなく泣いたり怒ったりする、突然歌い出す、壁に向かって走り出すなどの異常行動が現れることがあります。
高熱が原因で幻覚を見ていることもあるので、意識障害やけいれんの症状が現れていなのであれば、しばらく様子を見てください。長時間にわたって異常行動を見せる場合は、すぐに近くの医師に診てもらいましょう。
診断方法は?
インフルエンザ脳症の診断を行うには、まずインフルエンザにかかっているかを調べる必要があります。インフルエンザの診断は、綿棒で鼻の粘膜を採取してそれを調べる迅速検査で行われます。
5分ほどで結果が出るのでその場で行ってくれます。(インフルエンザに感染していても感染してからの期間によっては検査結果で陽性が出ない場合があります、そんな時は医師に相談してください)
インフルエンザにかかっていると診断された状態で意識障害が出ている場合は、インフルエンザ脳症の疑いがあるため、頭部の画像検査(CT・MRI)や脳波検査を行うことが多くあります。あいの泉クリニックでは近くの設備のある病院をご紹介させていただきます。
インフルエンザ脳症が疑われる症状が現れたら、早急に病院に連絡しましょう。インフルエンザ脳症が発症していると診断された場合には、以下のような支持療法、得意的治療が行われます。
支持療法
インフルエンザ脳症の支持療法では、心肺機能の評価と安定化、気道の確保、体温・呼吸数・血圧などのモニタリングを行います。また、抗けいれん薬を用いたけいれん対策や、解熱鎮痛剤を使用した体温管理も行います。
特異的治療
特異的治療は、インフルエンザ脳症の原因である免疫異常を抑えるための治療です。具体的には、ステロイドを大量投与する「メチルプレドニゾロン・パルス療法」や、免疫抑制効果のあるガンマグロブリンというたんぱく質を投与する「ガンマグロブリン療法」などがあります。
後遺症
厚生労働省によると、インフルエンザ脳症を発症した場合、約25%の確率で後遺症が現れるとされています。
インフルエンザ脳症の後遺症としては、身体障害では四肢麻痺や片麻痺、精神的障害では知的障害やてんかん、高次脳機能障害などが挙げられます。
こうした後遺症は、リハビリテーションを通じてある程度回復する事がありますが、症状によっても異なる為、担当医と相談しながら方法を検討する必要があります。
予防法は?
インフルエンザ脳症を予防する上で大切な事は、インフルエンザに感染しない事です。日頃から手洗いやうがいを徹底し、インフルエンザが流行している時期には人混みを避け、外出時にはマスクを着用するようにしましょう。
インフルエンザワクチンの予防接種を受けておく事が、重症なインフルエンザ脳症の予防に繋がります。5歳になるまではインフルエンザ脳症の発症率が高いので、インフルエンザワクチンの予防接種ができる生後6ヶ月以降は、出来るだけ早めにワクチンを打ってもらうようにしましょう。
また、インフルエンザにかかっている時に、アスピリンを含んだ解熱剤を服用すると、インフルエンザ脳症を引き起こしたり重症化させたりする可能性があるので、解熱剤としてはアセトアミノフェン系が推奨されています。
注意!!
子供が高熱でうなされている姿を見ると、解熱剤で少しでも楽にしてあげたい!と思いますが、インフルエンザが疑われる場合は自己判断で市販薬を使用せず、まずは病院を受診して診断してもらいましょう。
2005年に、厚生労働省研究班によるインフルエンザ脳症についてのガイドラインが示されたおかげで、死亡率は30%から10%以下に低下しました。
しかし、それでも、インフルエンザ脳症が大切な子供の命を奪うかもしれない危険な病気である事には違いありません。
日頃からインフルエンザにかからないように予防を意識し、インフルエンザ脳症が疑われる時には、すぐに医師に診てもらうことが大切です!
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